さて今回はドライブラシについて語ってみようと思います。僕の戦車ウェザリングというのは、ドライブラシで始めたようなものですが、これがまた奥が深い。
僕もドライブラシの深淵にはとても手が届かないのですが、ビギナーの方でもワンランク上の作品を目指せる技法として、僕なりの解釈と方法ですが、作例も交えつつ紹介していきます。ちなみにガンプラでも同様の手法が使えます。
ドライブラシは初心者にも簡単にできる
ドライブラシの最大の利点は「簡単にかっこよく仕上げることができる」という点だと思います。特別な道具立ても必要ありませんし、技法としてもたいへんにシンプルです。ウェザリング入門編としてはとても良い入り口だと思います。
いろいろウェザリングの技法を試した結果、「苦労対効果」という観点で、結局ドライブラシが最強なんじゃないかと思い始めています。ドライブラシをやるのとやらないのとでは、随分と印象が変わるなぁと思います。
戦車を塗装し始めた頃、最も効果に感動したのはドライブラシでしたし、今でもやっていて表情が劇的に良くなるのはドライブラシだと感じています(2016年末時点)。
ドライブラシの概要
ドライブラシは技法としては非常にシンプルです。筆に塗料をとって、それをティッシュ等で拭き取ります。全部は拭き取らず、掠れた色がつくくらいの「パサパサ状態」にします。その状態で戦車や機体の尖った部分や、角、面の部分に筆を擦り付けていくだけのことです。
ドライブラシに必要な道具
道具立てはシンプルです。2つだけ必要ですが、両方ともおそらく持っていると思います。
- 筆(ナイロン製がオススメ)
- 塗料(エナメル塗料がオススメ)
では詳しく解説します。
ドライブラシに使う筆について
筆はなんでも良いのですが、オススメなのはナイロン製の筆です。下記の筆はダイソーで売っている100円で4本入っているような筆ですが、これで充分です。ドライブラシは筆を痛めてしまうので、高級な筆や細くて細部を塗装する際などに使う筆はもったい無いのでやめておいた方が良いでしょう。
豚毛の筆は硬くてオススメしません。水彩画に使うようなファサファサした筆も良いと思いますが、僕は好みません。好みが出てくると思うので、色々な筆を試してみるのも良いと思います。
筆の毛が長い場合は、ある程度カットしておくと使い勝手が良いです。長すぎるとうまくコントロールができなくなります。この辺りはやって見て自分にあったところを探していくのが良いでしょう。それがまた面白みでもありますしね。
ドライブラシで使う塗料について
エアブラシで塗装をする方はおそらくラッカー塗料(Mr.カラーシリーズ)で車体を塗っているかと思います。僕は筆塗り専門なので、アクリル塗料(タミヤアクリルのシリーズ)で車体を塗っています。
とはいえ、多くの方はウェザリングはエナメル塗料で行われると思います。エナメル溶剤はアクリル塗料もラッカー塗料も侵食しないので、失敗しても溶剤で消せるからですね。まぁ初心者の方は「ラッカー系、アクリル系塗料の上にエナメル塗料を塗っても、それは溶剤で消せるのでやり直しができる」と思っておいて良いと思います。
やりすぎた場合に消せない、というのは緊張感がハンパないものですから、何とかなるようにしておくのが精神衛生上、良いわけですね。というわけでエナメル塗料を使いましょう。
色ですが、基本的には明るい色が良いです。僕は横着者なので、だいたいタミヤエナメル塗料のフラットホワイトを単色で使っていますが、本来であれば基本塗装色を白で明るくしたものが良いです。
ウェザリング入門、ドライブラシを実際にやってみる
それでは実際にやってみましょう。とはいえ前述した通り、やり方はいたってシンプルです。
筆に塗料をとって、それをティッシュ等で拭き取ります。全部は拭き取らず、掠れた色がつくくらいの「パサパサ状態」にします。その状態で戦車や機体の尖った部分や、角、面の部分に筆を擦り付けていくだけのことなのであります。
筆の塗料はティッシュでも良いですが、新聞紙だとかすれ具合がよく分かるのでオススメです。
入門編:エッジ周りのドライブラシ
1番取り掛かりやすいのが、エッジ周りのドライブラシです。戦車や機体の角や、曲がっている部分を中心に、筆を角に対して直角に立てるようにしてファサファサしましょう。
最初はちょっと落としすぎかな、というくらいに塗料を落としてからやることをオススメします。失敗してべちゃっとなるよりは、よほどマシだからですね。まぁ失敗したらエナメル溶剤を綿棒につけて拭き取れば良いんですが。。
何度かやれば、拭き取る量はすぐに肌感で分かるようになりますので、やってみて下さい。エッジが際立って、突然自分が塗装した戦車が見違えて格好良くなっていくことに気づくと思います。僕は最初夢中でやって、ドライブラシで車体を全部覆ったりしました。楽しかったんです。。
角がだいぶハッキリしました。風合いも良くなります。
入門編:車体下部へのドライブラシ
車体の下部にある転輪や誘導輪、起動輪、さらにサスペンション機構などにもドライブラシをしておきましょう。もろもろハッキリして格好良くなります。
下の写真はドライブラシ前です。
続いてドライブラシ後。
モヤっとした転輪周りがいい感じになりました。
ランクアップ編:面のドライブラシ
エッジがうまく出来るようになったら、面のドライブラシにも挑戦してみて下さい。特に鋳造表現のされている砲塔なんかにはぴったりでとても格好良くなります。
角のドライブラシが、筆を直角に当てていたのに対して、面のドライブラシは面に対して筆を平行ににして、サッサッと筆が表面をかすっていくイメージで筆を動かします。エッジから下へ、またはエッジから上へ、少しずつやると良い感じになります。
上のサンプルで言えば、車体のところどころにある白くなっている部分で、こういうところはあえてドライブラシをしている場所としていない場所を用意するとメリハリが出ていい感じになります。
応用編:ドライブラシのために表面に仕込みを入れておく
面のドライブラシは表面の凹凸を生かして攻めた退色表現をするものです。表面がでこぼこするように仕込んでおくことでドライブラシで表情をより豊かにすることができます。リアリティというよりは塗装の工夫、という感じでしょうか。
仕込みその1:溶剤で表面を荒らす
僕はアクリル塗料を筆で車体に塗っていますが、アクリルで塗装した後にアクリル溶剤で表面を擦ります。これはその表面をあえて「荒らす」ためにしています。荒らしておくことで、墨入れやドライブラシの過程で面白い表情が出てきたりします。詳しくは下記を参考にしてください。
なお、ラッカー塗料で塗っている方は、ラッカー溶剤でやってみるとうまくいくかもしれません(やったこと無いのでわかりませんが、、、)原理的には同じことです。
仕込みその2:溶剤で表面を荒らした上に、一工夫する
その1の派生パターンです。アクリル溶剤で表面を柔らかくした後で、表面をより激しく荒らすために小道具を使います。ワイヤーブラシや歯ブラシです。ワイヤーブラシを使うと引っ掻いたような細い傷をつけられます。引っかいて溝を掘るということは、溝の左右に突起が出来ることでもあるので、ここにドライブラシの際に塗料が乗ります。
また歯ブラシも有効です。アクリル溶剤で柔らかくした表面に歯ブラシを叩きつけるようにすると表面が毛羽立った状態になります。微妙な突起が残るのでドライブラシのしがいがあります。下の写真のⅡ号戦車C型は、歯ブラシ + ドライブラシの例です。
仕込みその3:塗装時に小さな粒を練りこんでしまう
その1、その2はともに表面を塗装した後で、塗装面を溶かして荒らす、という方法でしたが、その3ではそもそも粒状のものを塗料に混ぜ込んで塗装してしまいます。当然微妙な突起ができますから、そこにドライブラシで塗料を乗せてやろう、という方法です。
先日試したのは、コーヒー粉で、単純に捨てるのがもったいなく思えたので適当に練り込んで見た、という雑な発想でしたが、案外良い具合になりました。
表面に仕込んだつぶつぶを生かしてドライブラシであります。詳しくは下記の記事を参考にしてください。
仕込みその4:プラ材にパテや溶剤で鋳造表現をしてドライブラシする
塗装の前段階で仕込む手もありますな。鋳造表現(ゴツゴツした鉄の感じ)を溶きパテを用いて作ることができます。ちょうど先日、KV-2で試してみたのですがあんまりうまくいきませんでした。。
もうちょっとうまくいったら、この部分は更新します。
流し込み溶剤を使って表面を荒らしてから、粗いヤスリをかけるという手法もあるようです。まだやったことは無いのですが、これもやってみたら記事化しておこうと思います。
何にせよ、塗装前に仕込みを入れておくのがその4です。
まとめ
以上、脱初心者のためのドライブラシの話でした。最後の方はだいぶマニアックというか、ヘンテコな遊びも混じっていますが、まずはエッジ周りのドライブラシから身につけていくと良いと思います。簡単なわりに奥が深いのが、ドライブラシですな。
それでは良い戦車ライフを!
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